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最近の車を眺めていると8速ATというのが当たり前になってきましたが、何故8速ATなのか、4速ATではダメなのかを理解している人は少ないと思います。
ギアの仕組みや役割については、以前まとめましたので割愛いたします。興味のある方は以下記事を参照してください。
参考→ トランスミッションの違いによる買取価格差
夢の変速機として期待されたCVT
一昔前の車であれば4速ATというのが一般的で、高級車だと5速AT、あるいはマニュアル車で5速MTという設定が用意されていました。日常で使用する分にはそれほど加速性能は求められませんので、オートマは4速、加速を楽しみたいマニュアル車は5速や6速が設定されていました。
最初に変化が起きたのは、無段階変速と紹介されるCVTです。ギアによる変速ではなく、ベルトなどを用いて、加速に応じて回転速度を調節します。
無段階変速ということで、変速時の空転によるロスなどが発生せず、「夢の次世代変速機」と紹介されてきました。理論的には燃費が最大効率となるので、ほとんどのATからCVTへの移行が進みました。
しかし、理論上は完璧でも実践は完全でない事が多々あります。CVTの場合、変速をベルトで行いますが、自動車のような重量のあるものをそのまま動かすと、摩擦によってベルトが切れてしまうため、潤滑油を用います。しかし潤滑油を用いると滑るため、今度は圧力をかけて滑らないようにします。この圧力をかけるポンプはエンジンで動かすので、エンジンパワーのロスになります。
理論的に最も燃費の良い回転数で走り続ける事を目的として、CVTが導入されましたが、仕組み的には必ずロスが発生してしまうという矛盾を抱えてしまいます。
また、CVTの場合、運転者の操作感覚と乖離する事が発生しやすくなります。加速のためにアクセルを踏みますが、操作の大半は同じ速度での走行、つまりアクセルによる速度管理です。アクセルを緩めればエンジンブレーキで減速し、踏めば加速します。
ところが、CVTの場合、燃費効率を最大化するためにプログラミングされているため、坂道などでアクセルを踏む力が一定でも勝手に加速したり、あるいは減速したりします。もちろん一定のラグがあって解消されますが、ドライバーが管理しているはずのアクセル操作に対して、不定期に割り込みが入るような挙動は望ましくありません。
これを改善するために、仮想的にギアがあるような設定を導入した車もありましたが、無段階変則が目的のCVTに導入するのは本末転倒といえます。
加えてCVTは技術的に難易度が高いため、メンテナンスコストが高いという問題もあります。自動車は国内消費だけではなく、途上国への輸出も含みます。輸出後に故障した場合、「CVTは難しいので直せない」となれば販売すら難しくなります。あらゆる意味でCVTは実用化が早すぎた技術といえます。
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改善されたATの復権とギアの多段化
期待されたCVTが万能ではないという結果を受けて、再びATに注目が集まります。ATは何十年にもわたって積み重ねられた技術経験があり、また燃費効率の妨げとなっていた箇所に改善の見通しが立ったため、再びATが用いられるようになりました。
従来のATは前述のように4速などのギア数が主流でした。これは変速時のロスが大きいと考えられていたため、変速回数を少なくする事が目的なのと、部品点数が少なくなるので耐久性が高くなるためです。
しかしこれも前述のように最も燃費効率の良い回転数は決まっているので、4速しかないギアでは効率の良い回転数を使える範囲が狭くなります。そのため、燃費効率を向上させるには多段化が必須でした。
新しいAT技術の代表格といえば、マツダの「SKYACTIV-DRIVE」です。従来型のATやCVTにあったデメリットを消し、メリットのみを受けられる技術として公式サイトで紹介しています。実際に燃費は従来比で4~7%の改善を果たしています。ボディからエンジンまで「SKYACTIV」の名前で改善を果たしたマツダについては、以下記事をご参照ください。
参考→ マツダ車の過去(マツダ地獄)から変わった現在の買取状況
各社一斉にCVT採用に踏み切ったものの、CVTに問題があり、現在はAT技術の見直しが進んでいる最中です。高級車の場合はAMTと呼ばれるMTの変形やDCTと呼ばれる技術も出ていますが、コストの問題で普及し切れていません。
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10速ATが標準化の流れ
今後も改善が進んでいきますが、しばらくは8速ATが主流になると思われます。低速ギアと高速ギアの差が現在8倍程度ですが、これを10倍程度にしたいと各社考えています。発進時の加速と高速巡航効率とのバランスが最も優れているのが10倍程度の比率だと言われているためです。
2016年の2月にホンダが10速ATを公開しましたが、これが話題になったのも、現在のATの切り札として10速ATが考えられているためです。今後の標準となる可能性を秘めているのが10速ATです。
4速や6速ATから10速ATにするには、ギア数を増やすわけですが、車の大きさというのは変わらないので、そのままだと入りきらないサイズになってしまいます。そのため、省スペース化、軽量化が必須となります。
ホンダの発表した10速ATは従来の6速ATのサイズに収められていますので、設計の変更をせず、そのまま置き換えになります。従来の6速ATサイズと同等にしながら、変速応答時間が30%向上、燃費が6%向上、高速巡航時のエンジン回転数が26%以上軽減したと発表しています。
今後購入する際には8速、10速ATやAMTなどが標準になっていくと考えられます。現在CVT車に乗っている場合、買い換え時に査定アップ要素となるか期待したいところですが、これまで見てきたように、問題を抱えていますので、今後敬遠される可能性があります。特に故障した場合の修理費が高額になりやすいので、多走行車ほど査定ダウンとなる可能性があります。
CVT車に乗っている場合は、よほど気に入っている場合を除いて、早めに乗り換えた方が良いかもしれません。
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